この記事では薬師寺の歴史・建築の特徴を分かりやすく解説します。
伽藍配置や特色を知って、薬師寺観光を楽しみましょう。
薬師寺の観光ルート解説記事
薬師寺の歴史を分かりやすく解説。
薬師寺が建てられた理由を簡単にまとめる(短い)
創建された年
日本書紀の記録、薬師寺東塔「相輪(塔の一番上に付いている金具の装飾品)」の支柱に刻まれた記録に拠ると680年(飛鳥時代)です。
建てた人と創建の理由
天武天皇によって建立されました。
天武天皇の皇后、鸕野讃良(うののさらら)が病にかかります。
※鸕野讃良(うののさらら)は後の持統天皇
天武天皇は病気からの回復を願い、お寺を建てること決めます。
無事鸕野讃良(うののさらら)の病気は治りますが、今度は天武天皇が病にかかります。
残念ながら建設中に崩御(ほうぎょ)してしまい、持統天皇が引き継ぎ、文武天皇が薬師寺を完成させました。
※崩御(ほうぎょ)…天皇、皇后などが亡くなること
薬師寺の歴史を分かりやすくまとめる(長め)
680年 薬師寺が建立される
710年 都が平城京へ
718年 遷都に伴い、薬師寺移転がスタート
730年 東塔完成
薬師寺が建てられた680年、都は藤原京でした。
現在の橿原(かしはら)市、明日香村周辺に位置します。
710年、藤原京の約20km北、平城京(現在の奈良市)へ都が移されます。
遷都に伴い、平城京の西側「西の京」に薬師寺が移転しました。
移転前の薬師寺を本薬師寺(もとやくしじ)と呼びます。
本薬師寺と平城薬師寺の伽藍配置、建物の規模はほぼ同じ。多少の違いはあれど、本薬師寺を再現していたことが分かります。
本薬師寺は平安時代まで存在していましたが、その後は廃寺となりました。
現在残っているのは、礎石(そせき)のみです。
973年 火災により、金堂・東塔・西塔以外の建物が焼失→再建
1528年 戦禍により、東塔・東院堂以外の建物が焼失
1600年 豊臣家が仮金堂再建
1852年 大講堂再建1968年 白鳳伽藍復興事業開始
(昭和43年)
1976年 金堂再建
(昭和51年)
1981年 西塔再建
(昭和56年)
1984年 中門再建
(昭和59年)
1991年 玄奘三蔵院伽藍建立
(平成3年)1998年 「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録
(平成10年)2003年 大講堂再建
(平成15年)
2017年 食堂(じきどう)再建
(平成29年)2021年現在も復興事業は続いています。
かつては華麗な大伽藍でしたが、度々の災害や戦禍により焼失します。
金堂・大講堂が再建されるも、かつての栄華はなく、五重塔だけを残し荒れ果てて行きました。
歴代住職の悲願、薬師寺復興を進めたのが高田好胤(たかだこういん)でした。
副住職の高田好胤さんは、楽しい話術で人気のお坊さんです。
修学旅行生に楽しく分かりやすく薬師寺を案内し、評判となりました。
1967年(昭和42年)住職に就任すると「白鳳伽藍(はくほうがらん)復興事業」をスタートさせます。
薬師寺は檀家(だんか)を持ちません。
※檀家…特定の寺院に所属し、寺院を支援する家のこと
どうやってお金を工面したかと言うと、得意の話術を生かした方法でした。
全国で講演をし、一人1000円の写経納経による、勧進(寄付集め)を行いました。
※写経納経…書き写したお経を納めること
※勧進(かんじん)…寺院再建のために、寄付を集めること
八千回を超える精力的な講演、本の販売、仏像の展示会といった活動により寄付が集まり、金堂・西塔・中門・大講堂が完成、かつての壮麗な伽藍がよみがえりました。
高田好胤(たかだこういん)さんが薬師寺復興ために行った写経勧進、楽しい法話は現在も薬師寺で受け継がれ、行われています。
移建・非移建論争
平城京遷都に伴い、薬師寺も移転しましたが
移転先でどのように建物を建てたかが論争となっています。
「もともと建っていた五重塔などを解体し、平城京で再構築したのではないか?」=移建論
「平城京で新たに建てたのではないか?」=非移建論
移建論が正しいなら
→五重塔は飛鳥時代(白鳳文化)のもの
非移建論が正しいなら
→五重塔は奈良時代(天平文化)のもの
となります。かなり重要な問題ですね。
明治時代から論争になっています。
現在は非移建論が有力となっていますが、はっきりと決着はついていません。
薬師寺の宗派
法相宗(ほっそうしゅう)
興福寺と同じ法相宗です。
法相宗を開いたのは、玄奘三蔵・げんじょうさんぞうのお弟子さんです。
薬師寺の伽藍配置とは?
伽藍(がらん)とは、寺院の主要な建物(金堂・塔・講堂など)の集まりを言います。
お寺や時代によって伽藍の配置に特徴があります。
参考に法隆寺の西院伽藍と、薬師寺の白鳳伽藍を図にしました。
左側が法隆寺にある西院(さいいん)伽藍です。
法隆寺式伽藍配置の特徴は左右非対称である点。
右側が薬師寺の白鳳伽藍です。
薬師寺式伽藍配置の特徴は塔が2基ある点。
それまでは一寺一仏塔でしたが、薬師寺は史上初の塔2基!画期的な配置となりました。
①東塔・西塔の建築・特徴
【国宝】東塔(とうとう)の建築・特徴
高さ:34.1m
創建:奈良時代
薬師寺で唯一残った奈良時代の建築物、東塔(とうとう)です。
築1200年を超えます。
いつまでも見ていられる~…と感じる色合い、優美なフォルム。
日本が誇る美しい塔の一つです。
屋根がたくさんありますが、こう見えて三重塔なんです。
どういうことか?
屋根は三つ、残り三つは裳階(もこし)と言われるものです。
裳階とは屋根の下にある小さな屋根(庇・ひさし)の様なもの。
風雨から塔を守るためにつけられます。
法隆寺の塔にも裳階(もこし)が付いていますが、一層目のみ。
薬師寺のように屋根それぞれに裳階(もこし)が付いている塔は珍しいです。
この裳階(もこし)が塔の形をメリハリあるものにし、そのバランスが絶妙。
美しい塔と言われる理由は裳階です。
東塔の美しさを讃え
・凍れる音楽(byフェノロサ)
・リズミカルな美しさ
・律動的な美しさ
・竜宮の塔の写し
※美術研究科フェノロサが「凍れる音楽」と言ったとの説だが実際は黒田鵬心の表現
などと表現されるほど。
東塔は築1200年超え!強さの秘密。
◎桧(ひのき)を使って建てている
ひのきは、耐久性・耐水性が高い木材。世界最高の建築材と言われています。
◎現代の建築に匹敵する耐震性
これまで大きな地震が8回ほどありましたが、東塔は倒壊することなく無事でした。
地震に強い秘密は地上から天井を結ぶ一本の柱(心柱・しんばしら)です。
自分の重さだけで立ち、地震の際には各層がバラバラに揺れます。
その効果は以下の通り。
地震の揺れで建物が揺れるとき、建物のなかに「タイミングがずれて揺れるもの」があると、全体の揺れが打ち消しあい、小さくなるというものです。
引用:キッズ・ウェブ・ジャパン
西塔(さいとう)の建築・特徴
高さ:35m
再建:1981年
500年前の火災で焼失しましたが
1981年(昭和56年)に再建、東塔を参考に創建当初の塔が再現されました。
赤色の木材に緑色の連子窓(れんじまど)、華やかな色合いが印象的です。
そして東塔と同じように裳階(もこし)がついています。
東塔と西塔が並び立つのは約500年ぶり。
金堂を中心に2つの塔が並び立つ様は圧巻です。
また、東塔と西塔は高さが違います。
その理由は、西塔を再建した500年後に東塔と同じ高さにするため。
西塔を再建した宮大工が、木材の性質などを考慮し、あえて東塔より高く建てたそうです。
500年後を見据えた建築、すごすぎます。
金堂(こんどう)の建築・特徴
高さ:22m
再建:1976年
横幅41m、奥行20m、高さ17m
1600年に豊臣家により仮金堂が建立されるも、そのまま400年が経つ。
1976年(昭和51年)に悲願の再建となりました。
三手先組物は東塔を参考に再建されました。
屋根に金色の鴟尾(しび)があります。
※鴟尾(しび)…屋根の装飾品。火除のおまじない。
そり気味の立派な屋根、屋根下の裳階(もこし)による立体感のあるフォルム。
色合いが鮮やかで大きい!壮麗です。
ご本尊は国宝「薬師三尊像」
金堂には、ご本尊の薬師三尊像(やくしさんぞんぞう)がいらっしゃいます。
奈良時代(白鳳文化)に造られたものです。
奈良時代の仏教彫刻史上最高傑作の一つと言われています。
小川晴暘(1894-1960) 仏像写真家 飛鳥園創業者) – 上代の彫刻,朝日新聞社, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6844993による
三尊像の中央が薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)
高さは254.7cm、銅製
ちなみに薬師如来様の台座も国宝です。
薬師如来坐像の脇侍(きょうじ)には、日光菩薩、月光菩薩がいらしゃいます。
※脇侍…本尊の左右に控える菩薩、明王など
日光・月光菩薩は「三曲法」という技法が使われています。
首・腰・膝をひねらせることで、しなやかな身体の動きが表現されています。
パンフレットには「動きのある美しい姿で、理想的な写実美を完成した仏様」とまで書かれています。
見どころ・仏像を解説した記事です。
【国宝】東院堂の建築・特徴
1285年(鎌倉時代) 再建
正面7間、側面4間
入母屋造本瓦葺
以前は南向きに作られていましたが、1733年に西向きに建てかえました。
日本最古の禅堂(座禅のためのお堂)です。
中に安置されているのは「聖観世音菩薩立像・しょうかんぜのんぼさつりつぞう」です。
像高188.9cm、奈良時代(白鳳時代)に作られました。国宝。
拝観料・営業時間・お問い合わせ
・拝観料
金堂・東院堂・塔など
大人 1,100円
中高生 700円
小学生 300円
特別共通割引券、団体割引あり
※詳細はこちら(薬師寺ホームページ)
・営業時間
8:30~17:00
(受付は16:30まで)
・定休日
なし
・施設情報(トイレなど)
トイレ・休憩所・売店あり
・お問い合わせ
0742-33-6001
※最新情報はこちら(薬師寺公式ホームページ)
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