法隆寺の歴史と建築様式をわかりやすく解説!飛鳥時代の特徴を残す、世界最古の木造建築。




世界最古の木造建築、法隆寺についてまとめました。

法隆寺には飛鳥時代の建築物として面白い特徴が見られます。

建築の特徴や歴史について分かりやすく解説しました。

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法隆寺の歴史を分かりやすく解説

創建の歴史を解説(短め)

創建年

607年

聖徳太子の最古の伝記、上宮聖徳法王帝説(じょうぐうしょうとくほうおうていせつ)の記録に拠ります。

日本書紀によると606年ではないか?という説も。

創立者と創建の理由

586年、用明天皇が天然痘(致死率の高い感染症)に感染。
病気平癒を願い、寺と仏像を建てようとしますが、計画段階で崩御(ほうぎょ)してしまいます。
※崩御(ほうぎょ)…天皇、皇后などが亡くなること

用明天皇の子、聖徳太子
用明天皇の妹、推古天皇

お二人が遺志を継いで、薬師如来を本尊とする寺を建立しました。

そのお寺が現在の法隆寺です。

法隆寺の歴史を解説(長め)

607年 法隆寺が建立される
670年 火災により焼失
7世紀後半~8世紀初頭 再建
(時期ははっきりしていない)
738年 高僧行信(ぎょうしん)が、上宮王院(じょうぐうおういん)を建立

常宮王院は後の東院伽藍です。

法隆寺は607年に創建されましたが、その後火災により消失。
8世紀初頭に再建されています。

最初に建てられた法隆寺(以下「創建法隆寺」という)と、再建されたものとは違いがあります。

違いは建てられた場所と伽藍配置です。
※伽藍(がらん)…寺院の主要な建物(金堂・塔・講堂など)の集まり

伽藍配置について、
今の伽藍は、西院伽藍(さいいんがらん)
創建法隆寺の伽藍は、若草伽藍(わかくさがらん)
と呼びます。

それぞれの伽藍配置を図にまとめました。

創建法隆寺の遺跡「若草伽藍」では、塔や金堂が南から北へ一直線に並んでいます。
四天王寺式の伽藍と呼ばれ、大阪の四天王寺など飛鳥時代の代表的な配置です。

現在の「西院伽藍」は、左右非対称の配置が特徴です。
7世紀後半~8世紀初頭に再建されてました。

925年 西院伽藍の大講堂、鐘楼が焼失→再建
17世紀~18世紀 豊臣秀頼、桂昌院(徳川綱吉の母)により伽藍の修繕
1934年 昭和の大修理開始、金堂、五重塔などの修理
(昭和9年)
1985年 昭和の大修理が終了→完成記念法要が行われる
(昭和60年)

1993年 「法隆寺地域の仏教建造物」として世界遺産に登録
(平成5年)

修繕・修理を繰り返し、現在に至ります。

昭和の大修理が行われていた1949年(昭和24年)、修理中の金堂で火災が発生。初層にあった貴重な壁画が燃えるという大惨事となります。
その火事がきっかけで文化財保護の機運が高まり、文化財保護法が制定されました。
※火災の起こった1月26日は文化財放火デーに制定されています。

1993年には、日本で初めて世界遺産に登録されました。
評価されたポイントは、大陸(中国や朝鮮半島)からの強い影響が見られる点、世界最古の木造建築である点です。

法隆寺の建築の特徴を分かりやすく解説

法隆寺の建築に見られる特徴をまとめました。

ちなみに世界最古の木造建築は、西院伽藍の「金堂・五重塔・中門・廻廊」です。

中門・廻廊 建築の特徴

中門(飛鳥時代/国宝)

中門や廻廊の柱には「エンタシス」の特徴が見られます。

エンタシスとは膨らみのある柱ですが、下から3分1辺りが一番太くなるよう作られています。

効果は以下の通り。

エンタシスを施した柱を下から見上げると、真っ直ぐな円柱よりも安定して見える錯覚を生むため巨大建築物の柱に用いられ、現代の建築でも使用されている構法である。

引用:wikipedia(エンタシス

下から見ると安定して見える視覚的効果があるそう。

エンタシスはパルテノン神殿を代表とする古代ギリシャが発祥と言われています。

「つまりギリシャの技術が日本に伝わったのか?」と言うと、そうではありません。ギリシャから日本へ伝わった形跡が無いため、独自に作り出したものと考えられています。

日本では胴張り(どうばり)と呼ばれ、平安時代にはほぼ見られなくなった技術です。

金堂 建築の特徴

金堂(飛鳥時代/国宝)

高さ:16m
創建:7世紀後半

飛鳥様式を残す世界最古の木造建築「金堂」。国宝です。

一層(一階)の下にある屋根は裳階(もこし)です。雨や湿気で壁画が劣化することを防ぐために取り付けられました。

残念ながら昭和24年の火事により、金堂の一層(一階)と壁画は焼失してしまいました。二層目が創建当時のものです。この火事が文化財保護法制定のきっかけとなりました。

飛鳥様式の特徴

重い屋根を支える組物が雲の形をしています。

尾垂木(おだるぎ)を支える肘木が雲の形→雲肘木(くもひじき)
横向きの木(通し肘木)を支える雲形の斗(ます)→雲斗(くもと)

卍崩しの高欄(まんじくずしのこうらん)
高欄(こうらん)が、卍の文字を崩したデザインで作られている。
※高欄…手すりのようなもの

人字型割束(ひとじがたわりづか)
「束」とは短い柱のこと。「人」という文字の形のように、下半分が割れた束のこと。

雲斗・雲肘木など、ご紹介した特徴が飛鳥様式です。
塔にも同じ特徴が見られます。

ちなみに屋根を支える龍は江戸時代に付けられたもの。金堂は軒が深く、屋根が重いため付けられました。

世界最古の秘密

法隆寺は世界最古の木造建築です。

木造建築は湿気に弱く、耐久性が良くないイメージがありますが、法隆寺の金堂や五重塔は1300年経っても現役です。
なぜ1000年以上も長持ちしているでしょうか?

その理由は2つあります。

①桧(ひのき)を使って建てている
ひのきは、耐久性・耐水性が高い木材。世界最高の建築材と言われています。

②修理しやすいように、柱の接合部分がパーツに分かれている
傷んだ部分だけの修理・取替えが可能となっています。

1934年からの昭和の大修理では、全ての部材をバラす大掛かりなものでした。
木材の大部分が傷んでいると予想されていましたが、実際に傷んでいるのは晒された表面のみで、中の保存状態は大変良いものでした。

使用した木材や建築の工夫により、ほぼ当時のまま法隆寺が現存しています。

五重塔 建築の特徴

五重塔(飛鳥時代/国宝)

高さ:32.55m
創建:7世紀後半

法隆寺の五重塔は安定感のある外観が特徴です。

塔の上がだんだん細くなる構造となっており、初層(1階)の屋根の一辺は、五層(最上階)の2倍の長さです。
※差が大きい事を「逓減率(ていげんりつ)が高い」と言われます。

そしてよく見ると、五重塔なのに屋根が6枚あることに気が付きます。
一番下の屋根は裳階(もこし)と言われるもので、重い屋根を支えるため後世に付けられたそう。

五重塔が地震に強い秘密とは?

法隆寺の五重塔は、地震・台風に強い構造として有名です。

五重塔は塔の真ん中に柱が一本立ち(心柱)、それを囲うように層が建っています。
柱は塔を支えますが、各層を支える役割をしていません。

初層の上に二層を、二層の上に三層を積み上げる「積み上げ構造」です。
各層どうしを強く結びつける物がないため、塔が揺れに合わせてしなやかに動くことが可能。

層が北に揺れれば、心柱は南へ
層が南に揺れれば、心柱は北へ

動くようになっており、塔が過剰に揺れる事を防いでいます。

つまり地震の揺れを吸収しているんですね。
この構造こそが、地震や台風に強い秘密!東京スカイツリーにもこの技術が使われています。

東院伽藍・夢殿 建築の特徴

夢殿(奈良時代/国宝)

創建:739年(奈良時代)
大改修:1230年(鎌倉時代)
最大径:11.3m

東院伽藍の中心となる建物が夢殿(ゆめどの)、国宝です。

もともとは上宮王院(じょうぐうおういんという別のお寺でした。
高僧の行信(ぎょうしん)が、聖徳太子とその一族の供養のために建てたと言われています。

聖徳太子信仰の中心地となり、法隆寺に吸収されました。

夢殿は八角形の円堂となっています。実は柱も八角形。

八角堂は供養する施設として建てられる事が多いです。また8という数字は「復活」を表すと言われていますが、八角堂とのつながりは不明です。

1230年の大改修について

1230年(鎌倉時代)の大改修で、夢殿が大きく変わりました。

下図のイラストが分かりやすいです。

画像右が奈良時代に建てられた八角堂、画像左が鎌倉時代に改修された八角堂です。

右(奈良時代)より左(鎌倉時代)のほうが、建物の中心部が高く屋根が急勾配です。
軒が深くなり、屋根が2重構造となっています。

この様な改修が行われた理由は、雨から建物を守るためです。

傑作の一つとされる装飾品

こちらが屋根の頂きにある「露盤宝珠・ろばんほうじゅ」

建物の内部に雨が入らないよう取り付けるものですが、屋根の装飾品でもあります。

露盤宝珠があることで、夢殿の壮麗さが際立ちますね。

夢殿の露盤宝珠は傑作の一つと言われています。

法隆寺の仏像・見どころ解説記事

拝観料・営業時間

・拝観料 割引

大人 1,500円
小学生 750円

団体割引、障がい者割引あり

・営業時間 定休日

定休日 なし

2月22日~11月3日
8:00~17:00

11月4日~2月21日
8:00~16:30

※最新情報はこちら(法隆寺ホームページ)

施設情報・お問い合わせ

住所:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1−1−1

施設情報(トイレなど)

トイレ・休憩所・売店あり

お問い合わせ

074-575-2555

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1件のコメント

はじめまして、詳細な記事拝読致しました。
世界最古の木造建築は魅力に溢れていますね。
ところで最近疑問に思う構造物があります。
数年前に訪れた際は気にならなかったのですが、
五重塔の裳階入口にもある手すりですが、
この手すりは裳階の創設時に取り付けられた
ものなのでしょうか。それとも後世に設置
されたものなのでしょうか?
調べてもなかなか分からずお伺いさせて頂きます。
どうぞよろしくお願い致します。

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